【丁寧に解説】年金の確定申告不要でも「今年は申告がトク」のなぜ?

年金の確定申告不要でも「今年は申告がトク」のなぜ?

年金収入が400万円以下で、ほかの所得が20万円以下。この条件を満たしていれば確定申告は不要になる。いわゆる「確定申告不要制度」だ。多くの年金受給者がこの制度に該当している。

ただし「不要」と「しない方がいい」はまったく別の話である。

令和7年分(2025年分)は、基礎控除の引き上げという大きな税制改正があった。結論から言えば、今年は例年以上に「申告した方が税金が戻る人」が増えている。面倒でも、一度は自分の源泉徴収票を確認した方がいい。

目次

基礎控除が48万円から最大95万円に上がった

2025年度の税制改正で、所得税の基礎控除額が大幅に引き上げられた。改正前は一律48万円だったものが、合計所得金額132万円以下の場合は95万円になる。差額は47万円。これはかなり大きい。

65歳以上の年金受給者で考えると、公的年金等控除110万円に基礎控除95万円を足して205万円。つまり年金収入が205万円以下なら、そもそも所得税がかからない計算になる。

ところが、年金からの源泉徴収はこの改正を十分に反映していない場合がある。令和7年11月までの源泉徴収事務には変更がないと国税庁も明記している。つまり、改正前の基礎控除48万円をベースに天引きされた税金が、本来払わなくていい額より多くなっている可能性がある。

その差額を取り戻す手段が、確定申告だ。

源泉徴収票の「源泉徴収税額」がゼロでなければ要チェック

手元にある「公的年金等の源泉徴収票」を見てほしい。源泉徴収税額の欄に数字が入っていれば、所得税が天引きされている。この場合、確定申告をすることで税金の一部または全部が還付される可能性がある。

特に、以下のような人は申告による還付が見込めるケースが多い。

年の途中で退職し、年末調整を受けていない人。扶養親族等申告書の提出を忘れた人。生命保険料や地震保険料を自分で支払っている人。年間の医療費が一定額を超えた人。ふるさと納税をした人。住宅ローン控除の適用がある人。配偶者と死別や離婚をした人。

いずれも、確定申告不要制度の対象者であっても、申告すれば税負担を減らせる。

医療費控除は「10万円」がハードルではない

よくある誤解が、「医療費が10万円超えないと控除を受けられない」というもの。実際は、総所得金額等が200万円未満の人は、その5%を超える医療費で控除が受けられる。

たとえば年金収入が200万円の65歳以上の人の場合、公的年金等控除110万円を引いた雑所得は90万円。その5%は4万5000円だ。つまり年間の医療費が4万5000円を超えていれば、医療費控除の対象になる。高齢になると通院や薬代がかさむ。この基準をクリアしている人は意外と多いはずだ。

医療費控除まではいかなくても、ドラッグストアで買った対象医薬品の合計が年間1万2000円を超えていれば、セルフメディケーション税制が使える。ただし、医療費控除との併用はできない。どちらが得かは計算してみるしかない。

社会保険料控除の「漏れ」を見落とさない

国民健康保険料や介護保険料を年金からの天引き(特別徴収)ではなく、口座振替や納付書で払っている人は、その分が源泉徴収で考慮されていないことがある。確定申告で社会保険料控除として申告すれば、所得税が軽減される。

家族の国民年金保険料を代わりに払っている場合も同じだ。たとえば子どもの国民年金保険料を年間20万円払っていれば、その全額が控除対象になる。所得税率10%なら2万円の還付、住民税を含めればさらに上乗せされる。

こうした「自分では気づかない控除漏れ」は、年金受給者に限った話ではないが、年末調整がない分だけ見過ごされやすい。

ふるさと納税は少額でも使える

「年金だけだとふるさと納税の上限が低いから意味がない」と思っている人もいる。たしかに上限額は低い。年金250万円で配偶者を扶養している65歳の場合、自己負担2000円に収まる上限は1万5000円前後だ。

ただ、1万5000円の寄附でも返礼品は3割の4500円相当。2000円の自己負担で4500円分のものがもらえるなら、やらない理由はない。ワンストップ特例を使えば確定申告は不要だが、医療費控除など他の理由で確定申告をする場合はワンストップ特例が無効になるので注意が必要だ。その場合、寄附金控除もあわせて申告する。

住民税の申告も忘れずに

もうひとつ落とし穴がある。確定申告不要制度はあくまで所得税の話であって、住民税には適用されない。

生命保険料控除や医療費控除を住民税に反映させたければ、所得税の確定申告を出すか、市区町村に住民税の申告書を出す必要がある。所得税の確定申告をすれば住民税の申告は不要になるので、手間を考えれば確定申告を一本出すのが合理的だ。

今回の基礎控除の引き上げは所得税のみで、住民税の基礎控除は43万円で据え置きという点にも気をつけたい。所得税はゼロでも住民税はかかるケースが出てくる。

過去5年分は「還付申告」で取り戻せる

「去年もおととしも申告していなかった」という人でも、まだ間に合う。還付申告は、対象年の翌年1月1日から5年間が期限だ。今からでも過去5年分を確認して、控除の漏れがあれば税務署に還付申告を出せる。

とくに2020年分(令和2年分)は2025年中が期限になる。心当たりのある人は早めに動いた方がいい。

まとめ:「不要」に甘えず、一度は数字を確認する

確定申告不要制度は、年金受給者の手続き負担を減らすための仕組みだ。ありがたい制度ではある。ただ、「不要=しない方がいい」ではない。

2025年分は基礎控除の引き上げという追い風もある。源泉徴収票を引っ張り出して、源泉徴収税額を見る。ゼロでなければ、国税庁の確定申告書等作成コーナーで試算してみる。還付額が出てくるなら、e-Taxで申告を出す。所要時間は30分もかからないことが多い。

年金暮らしで数万円の還付があれば、それは決して小さな金額ではない。

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