ドルなどの海外通貨を取り引きすることで為替差益を得ることを目的とした「FX(外国為替証拠金取引)」は、基本的にはスマホやPCから自身で注文を出して売買を行いますが、「メタトレーダー(MT)」という取引ツールを使うことで自動的に売買することも可能です。
ただ、FXの取引時間は24時間ずっとであり、いつ相場に変化が起こるかはわかりません。
世界各国の通貨が取引できてしまうために、時には日本とは時差が大きい国の通貨で取引することもあるでしょう。
特に初心者向け・トレンドが読みやすいとされる「米ドル」でも、アメリカと日本の時差は9時間あるため、深夜に大きく相場が動くことも無いことではありません。
自動売買をする理由とは、この「いつ相場が動くかわからない」という事態にいつでも対処するためですが、自身のパソコンを常時稼働させると、機器としてのPC本体の寿命を縮めることにつながったり、騒音や機器の熱による火事などの問題が起きたりする可能性が大きくなります。加えて、多くのプログラムを動かすのであれば、PCのスペックも要求されるため、それだけ高価な高スペックマシンを用意しなければいけない場合もあります。
そこで、FXの自動売買には、企業が管理しているサーバーであり、低コスト・高スペックである「VPS(Virtual Private Server:仮想専用サーバー)」を利用した方が良いとされています。
本記事では、FXの自動売買におけるVPSのメリットやデメリットから、自動売買に必要なスペックの解説、おすすめとなるVPSの紹介までを行っていきます。
VPSのFX利用におけるメリット
「自身のPCを使っての自動売買も可能であるのに、どうして費用を支払ってVPSを利用するのか?」と感じる人もいるとは思いますが、そこには次のようなメリットがあります。
- Macなどでもメタトレーダーが使える
- 24時間稼働できる
- 安定&高スペック
- スマホからも設定可能
では、それぞれの項目について、詳しく説明していきます。
WindowsOS以外のパソコンでもMT4・MT5が使える
メタトレーダーの最新版は2010年にリリースされた「MT5」ですが、そのひとつ前のバージョンである「MT4」の利用も非常に根強いものとなっています。
その理由としては、メタトレーダー上で使用できる「エキスパートアドバイザー(EA:Expert Adviser)」が関係しています。
メタトレーダーを使って自動売買をするには、EAが必要になるのですが、MT4とMT5は開発に使用されているプログラム言語が異なっています。
そして、EAもそれぞれのバージョンに合わせて作られたソフトであるため、MT4用EAとMT5用EAに互換性はありません。
EAはさまざまな理論を基に構築された取引ロジックのプログラムであるため、MT5に対応していない優れたEAを使いたいと考えたときは、MT4上で稼働させるしかありません。
そのため、未だMT4が使用され続けているのです。
そして、このメタトレーダーはMT4・MT5ともにWindowsOSのパソコンでしか使用できません。
他のOSの場合は、仮想デスクトップでWindowsOSを立ち上げるなどといった方法しかありませんでしたが、実体マシンに比べるとスペックが落ちてしまいます。
FXの自動売買は多少注文を入れるタイミングがずれただけでも損が生まれてしまう可能性もあるため、注文するまでにラグが生じることは避けなければいけません。
しかし、VPSであれば、十分なスペックがある仮想デスクトップにアクセスして使用する形になるので、MacOSや他OSのパソコンからでも問題なくメタトレーダーを利用できます。
わざわざ新しくWindowsOSのパソコンを用意したり、自身のパソコンに仮想デスクトップを立ち上げる必要もないので、費用・手間がかからずに簡単に自動売買を始められるというのは、大きなメリットになるでしょう。
24時間自動売買可能
先にも多少述べましたが、PCを24時間稼働し続けるのは機器寿命を短くしたりといったリスクがあります。
ほかにも、アップデートによる再起動やマシントラブルのことを考えると、時には数分・長ければ数時間は取引ができなくなってしまう状況になることもあるでしょう。
機器の常時稼働では、熱暴走やHDDの故障などの可能性が大きくなり、プログラムのアップデートもいつ行われるのかがわからないため、対処することはほぼ不可能でしょう。
企業が運営しているサーバー上に構築されたVPSであれば、そのようなリスクを極小にすることができます。
サーバートラブルやメンテナンスがあったとしても、年に1~2回あるかどうかの話です。
また、熱暴走などのマシントラブルを気にする必要もないので、24時間の間、安心して自動売買プログラムを動かすことができます。
PCよりも高スペックで安定した取引ができる
自動売買の「EA」はひとつのロジックに対して稼働するため、別のロジックで取引するのであれば、また新たなものを稼働させなければいけません。
そのため、そこまで高スペックではないパソコンで複数のEAを稼働させようとすると、途中でスペック不足に陥ってラグが生じるなどの可能性は高いです。
複数稼働させずとも、ネットサーフィンやゲームなどを同時に行うことはできず、パソコンは完全に自動売買専用となってしまいます。
VPSを活用すると、高いスペックで自動売買プログラムのみを安定して稼働させ続けることができ、その間は自身のパソコンで他のことを行うというように使い分けることが可能です。
スマホからでも設定・操作できる
最近ではFX業者でもスマホアプリが充実しているところが多いですが、特定のロジックに基づいた自動売買を設定することはできません。
自動売買と呼ばれているのは「リピート系」という、設定した価格上限・下限で売り買い注文を出し続けるだけのものになります。
EAによる自動売買はより細かな条件を設定したうえでのロジックであるため、ここまでの自動売買を行いたいのであれば、PC環境が必要になります。
しかし、VPSの操作はスマホからでも可能であり、VPSを使用すれば、実質PC無しでスマホからの自動売買を行うことができるようになります。
出先や仕事の休憩中などで急な相場変動が起きたとしても、EAの停止やスマホから別のロジックを持つEAへの切り替えができるため、スマホ中心で取引している人にはVPSはおすすめになります。
VPSのFX利用におけるデメリットは費用の面のみ
自動売買にVPSを利用するデメリットとしては、月額費用がかかるということでしょう。
設備によって異なりますが、PCを24時間稼働させた場合でも、電気代は月額数十円~数百円程度しかかからないことが多いです。
対して、VPSは月額1,000~2,000円が最低ラインであり、よりスペックの高いプランを使うとなると、月額5,000円近くになってしまいます。
ただ、自分のPCを常時稼働させた結果、壊れてしまって買い替えることになると、VPSを使うよりもコストがかかってしまったということにもなりかねません。
月額コストは大きくなってしまうものの、買い替えのリスクなどが無い状況で自動売買を稼働し続けられるので、どこまで本格的にFXに取り組むかを考えて選ぶようにしましょう。
FX専用VPSと通常のVPSの違い
サービスの中には「FX専用VPS」というものがあります。
VPSは元々「仮想専用サーバー」であることから、設定の自由度が高く、OSもいくつか選ぶことができました。
そのため、VPSはゲーム用のマルチプレイサーバー構築や開発環境として利用することで高い人気を誇っています。
しかし、「FX専用VPS」というサービスはメタトレーダーを使用するために「WindowsOS」のみのサービスとなっています。
OSが制限されていることから、FXの自動売買以外の用途に使うのは難しいでしょう。
その分、通常のVPSと比較しても高いスペックを格安で使用できるようになっています。
また、メタトレーダーが初期インストールされているなど、借りてすぐに自動売買を開始できるような準備も整っています。
その他の用途にも使用したいと考えるのであれば、WindowsOSも利用できるVPSを選んでも良いですが、コストがかかることは理解しておきましょう。
そのため、自動売買専用にするならば「FX専用VPS」を使うことをおすすめします。
海外FX業者の無料VPSは利用ハードルが高く、スペック不足
海外FX業者の中には、取引サービスに加えて、自動売買用のVPSを提供しているところもあります。
条件によっては無料になるためにお得に感じるかもしれませんが、その実、無料になるまでのハードルが非常に厳しくなっています。
まず、無料VPSを利用するために、安くて20万程度・高いと50万ほどの口座残高が必要なところが多いです。
また、中には「ロット数」と取引量が条件になっているものもあり、この条件をクリアするために不要な取引を行って損してしまうことも少なくはありません。
そして、プランについても変更するためにはより多くの口座残高やロット数が必要になるため、容易に変更することもできません。
無料でなくとも、3,000~4,000円ほど支払えば、FX業者のVPSを利用することはできますが、それであれば、日本国内のVPSサービスを利用した方がコストの面でもスペックの面でも優れていますので、無理をして利用する必要はないでしょう。
FX用VPSに必要なスペック
最後に、FX用VPS選びについて、スペックで注意する点を説明していきます。
メタトレーダーを稼働させるためにOSが「WindowsOS」であることは絶対条件ですので、そのほかの「メモリ」と「ディスク」についての内容となります。
メモリの容量はEAの同時稼働数で決める
メモリとは「作業スペース」であり、メモリの容量が大きいほど、複数の作業を同時に行うことができます。
FXの自動売買においては「EAを何個、同時に稼働させるか」に関係してきます。
サービスによっては異なりますが、基本的に2GBで3つ、4GBで4つ程度のEAがストレスなく稼働できるとされています。
MT4の設定などで同時稼働可能数は変わりますが、なるべく多くのEAを稼働させたいと考えるのであれば、メモリ容量がなるべく多いものを使用するようにしましょう。
ディスクはSSD必須
FX専用でVPSを使用する場合、ディスクの容量は特に気にする必要はありません。
大容量でなくともよく、50~60GBの容量があれば十分でしょう。
注意すべきは容量より、「SSDであるか」という点です。
SSDとは「ソリッドステートドライブ」という、これまでのHDD(ハードディスク)よりも読み込み速度を向上させた最新のディスクドライブになります。
メタトレーダーやEAはディスクに保存されたプログラムであるため、読み込み速度が速い分、動作のラグが少なくなってきます。
これまでも述べてきましたが、ラグが生じてしまうと取引にも支障が出るため、ディスクはSSDであるかどうかは必ず確認するようにしてください。
FX向けVPSの一覧と価格・スペック比較
こちらは自動売買に利用できるVPSを「FX専用」「通常」問わずピックアップしたものになります。
1年間は利用することになると思われますので、その条件で金額を試算しています。
なお、契約内にリモートデスクトップ接続が可能となっているものもありますが、一部サービスでは「RDSライセンス」を利用ユーザーごとに契約する必要があります。
下記一覧の「おすすめプラン」において、RDSライセンスの記載があるものは、月額費用の金額も「サーバー料金+RDSライセンス費用」となっています。
サービス名称の部分をクリックすると公式サイトに飛べますので、気になったサービスがあれば、詳細はそちらで確認してください。
サービス名 | おすすめプラン | 初期費用 | 月額費用 | メモリ容量 | 初年度支払額 |
---|---|---|---|---|---|
お名前.com デスクトップクラウド | メモリ1.5GB | 無料 | ¥1,881 | 1.5GB | ¥36,036 |
ConoHa VPS | WIN2GB+RDSライセンス | 無料 | ¥2,783 | 2GB | ¥33,396 |
KAGOYA CLOUD VPS | 2コア/2GB (Windows+RDSライセンス) | 無料 | ¥2,475 | 2GB | ¥29,700 |
ABLENET | WIN1+RDSライセンス | 無料 | ¥2,365 | 2GB | ¥34,876 |
使えるねっと FX専用VPS | ゴールド | ¥2,50 | ¥3,278 | 4GB | ¥97,570 |
「お名前.com デスクトップクラウド for FX」が最も使いやすいVPSになります。
MT4も初期インストールされており、契約してすぐに使えるというのも魅力的な点でしょう。
次点としては「KAGOYA CLOUD VPS」が良コスパとなっていますが、こちらはメタトレーダーを自身でインストールしなければいけません。
リモートデスクトップで通常のPC操作のようにソフトをダウンロードしてインストールするだけですが、多少手間がかかってしまいます。
「ABLENET」はが、10日間の無料期間があることと転送量が無制限であるというメリットがあります。
初めてのVPSであれば、単月契約として無料期間を活用するというのも良いかもしれません
ベストFX向けVPS:お名前.com デスクトップクラウド
GMOインターネット株式会社が運営する「お名前.com」のFX専用VPS「お名前,com デスクトップクラウド」は、契約にリモートデスクトップ接続ライセンスが付与されているほか、MT4がインストールされた状態で利用できます。
また、Windowsリモートデスクトップ用のアプリを使えば、スマホから操作することも可能!
そして、FXの取引では、通信速度が遅いと注文がちゃんと通らず、予期しない価格での取引成立となってしまうことがありますが、「お名前,com デスクトップクラウド」は通信速度も重視しており、高速通信による取引ができるようになっています。
初心者・経験者問わず、コスパとスペックの両方からおすすめできるFX向けVPSと言えるでしょう。